採用の目的を今一度考えよう
採用される人に対して経営者が感じること
私自身が過去に体験した出来事の中に、新規に採用をした人についてクレームを受けたということがあります。
普通採用をした人材に関してのクレームというのは「無断欠勤をする」「能力が足りない」といったような仕事に関する姿勢についてのことが問題になるのですが、その時は少し様子が違いました。
というのも「うちの会社もそろそろ大きな企業になってきたのだから、もっと有名大学出身者を多く採用してほしい」というようなことだったからです。
当時担当していた会社は確かに伸び盛りということもあり、それまでは最終学歴が高卒という人はすでに年齢がかなり高い層だけとなり20~30代社員のほとんどが大卒という入れ替わりの時期を迎えていました。
私としては人事担当者として経営者が欲しいと思える人材を調べ、そこに見合うような人に来てもらうために各学校に働きかけをしてきたつもりだったので、正直そのクレームには「?」と思うところがありました。
経営者の方が言うにはこれから会社が伸びていくときにその先を任せることができる人材を育成するためにより高学歴の人間を優先させて欲しいということだったのですが、この主張は一理あるようで間違っています。
学歴優先の採用における間違い
確かに成長期の会社は知名度が急速に高くなるので、就職関連メディアに「将来性が期待できる企業」などとしてピックアップされ、それまでは見向きもされなかったような偏差値の高い学校の学生からも募集を受ける機会が増えてきます。
しかし良い大学に在学をしている人だから全て優秀な人材かというとそういうわけでもないというのが現実で、むしろ肩書に囚われた思い込みで採用を決めてしまうことで大きな失敗を招くこともあります。
一応はもっともらしい理屈をつけてはいましたが、クレームをつけた経営者の方の本当の意図が他の企業に対しての見栄にあるということは明らかです。
私はできるだけ丁寧に今回採用をした基準を説明をするとともに、今のところ問題なくみなまじめに働いてくれている、将来性のある人たちなのだということを示しました。
一応は納得をしてくれたようですが、やはり経営者としてはできるだけ学歴の高い優秀な人材を確保したいという気持は残ったようです。
確かに高い学歴を持つ人材は平均的に優秀な能力を持っていることは否定しません。
ですが仮に採用をしたとしても、企業におけるポジションが本人の想定していたものと全く異なっていては結局早期退職などといったミスマッチを起こしてしまうことになります。
私自身学歴という肩書で人材をちやほやしても後々よくないことしかないことをよく知っているつもりでしたので、どうすれば経営者の方にわかってもらえるかとても悩んだというのがその時の経験です。
入りたいと思わせる職場を提供できているか
ここ最近の採用の現場で一つのキャッチフレーズとなっているのが「理念共有採用」というものです。
これは会社説明会において経営者や会社の方針の説明に力を入れることで、会社の方向性を共有した人材に来てもらおうという取り組みです。
仕事に求めることへの意識は今や非常に多様化しており、「急成長をさせたい」というだけでなく「家族が安心して暮らしたい」「自分の時間を持てる働き方をしたい」といったように何を重視するかは皆異なっています。
採用後のミスマッチはそうした「会社とはこうあるべきもの」という意識がずれているときにしばしば起こるものなので、まずはそちらをきちんと示さなければ目的の一致する人材を集めることはできません。